気まぐれ 2
年末、どうしてもやり残して気持ち悪いことがあった。
先日の、気まぐれ老舗ラーメン屋で、
“大盛り五目ラーメン”を食べる事だっ。
年末の自分のスケジュールを考えても、行くなら今日、今しかない!
僕は意気込んで、リベンジすべく、ルンルンと店に向かった。
下調べは万全だ。
過去のデータから言って、この時間は大方開いているはずだ。
だが、今までに何度もすかされた事があるだけに、
油断は禁物だ。
僕は店に近付くにつれ、辺りを注意深く窺いながら、恐る恐る店の見える場所に立った。
…のれんが出ている‥。
当たり前だが、営業しているということだ。
僕は店をジッと見据えて、
「よしっ。」
自分に気合いを掛け、一直線に店へ向かった。
店の前で立ち止まり、ひとつ大きく深呼吸して、のれんをくぐり、扉をガラガラと開ける。
「いらっしゃい!」
と、男の低い短い声。
店内を見渡すと、客はおらず、正面のカウンターなかに初老の白衣を着た男が一人立っている。
老舗ラーメン屋の名物オヤジだ。
前回はこのオヤジの気まぐれにやられたんだ。
オヤジ、そうか、さては俺を待ってやがったな。
一対一とは気に入った!勝負だぜ!
僕は威勢よく、古い店らしく斜めっているカウンターに腰掛けた。
注文するものは決まっている。
「上五目ラーメン、大盛り!」
僕は鋭い口調でオヤジに注文をする。
普段なら五目ラーメンにするところだが、
一人で待っていたオヤジの心意気に、ここは最上メニューの、
“上五目ラーメン大盛り”。
「へいっ!」
と、短く鋭い返事が返ってくる。
さすがは老舗ラーメン屋のオヤジらしく、返事も古風だ。
オヤジはてきぱきと、それこそ何十年もそうしてきたろう慣れた職人の手つきでラーメンを茹で、こさえていく。
そうしてラーメンが出来上がった。
オヤジは、
「へい、おまちっ」
と渋い低い声で僕の前にラーメンを置いた。

上五目を食べるのは初めてだ。
普通の五目より具の種類が多い。
僕は、箸を取り、
「いただきますっ」
と、これまた短く返す。さあ勝負だっ!

まず、具と麺を絡ませる。
麺もいい具合に茹で上がっている。
さすがだ…。
僕は麺をずるずると口にする。
「美味いっっ」
思わず口走ってしまう。
それからは一気呵成だ。黙々とラーメンを食すのみ。
大盛りだが美味すぎて大盛りの気がしない。
どんどんどんどん胃袋に収まっていく。
そうして残すはスープのみ。
最期までぐいっと飲み干す。…最高!!!。
どんぶりを置き、ふ〜っと幸せの溜め息を吐いた。
ふと顔を上げると、
オヤジがニヤニヤしながらこちらを見ている。「どうだ、うちのラーメンは最高だろうよ!俺の勝ちだな。」
と言わんばかりの表情だ。
うぅ〜〜っ、くそっ〜!!
く、悔しいが今日もあんたの勝ちだよっ!!
…今日も負けて店を後にする自分でした…。
おい、老舗ラーメン屋!
来年こそは必ず勝ってやるぞ!
待ってろよ!
オヤジ、今年一年、ごちそうさんっ!!!
小山弘訓


