現場

昨年末から部屋探しをしています。
年末のクリスマスに以前住んでいた部屋を引き払いまして、
今は暫定仮住まいということでして。
そんなこんなで早く新居を見付けねばならないわけでして。ネットの賃貸情報、雑誌、町の不動産屋とひと通り目を通すが、
中々希望通りの物件が見付からない。毎日の恒例行事と化している、
深夜のネット検索。いつものように、いい部屋はねえが〜と探していた。
すると、とある物件が目に飛込んできた。…ん?…んん?
こ、これはっっ!!築年数、…OK。
場所、うんOK。
家賃、全然OK。
間取り、最高にOKッー!
OKOKOKッーー!!
夜中だが思わず叫んでしまう。
むしろ理想として望んでいた以上の良い部屋だ!
見っーけっ!!!
しかし、ネットで見つけたからといってここで喜ぶのはまだ早計だ。
ここに来るまでにネットで何件の物件を通り過ぎてきたかわからない。
かなりの部屋数を網羅してきた。
何百、何千いや何万件も見てきた。(はずだ!多分‥)実際、内見も沢山した。
いい!と思っても現場に行ってみると、そうでもなかったり。
希望通りの部屋などそうそうないし、第一いい部屋は空いていない。
ここ毎日のあてのない物件探しで疲れてきてもいる。
だからこそ、
この部屋はまさに砂漠の中のオアシス!
ハキダメに鶴!
空いていて欲しい!次こそはっ。
期待ではやる気持ちを抑えながら、
中々寝付けない晩を過ごした僕は、朝イチで不動産会社に電話した。「かくかくしかじかの物件なんですが…」
「あ、それ、まだ空いてますよ。」
「…」
アイテ…ル?
よっしゃっっー!
来た、とうとう来た。
まさにビンゴ!
期待する気持ちを抑えていた分、こんな嬉しいことはない。
しかもこの物件は情報を見る限り最高だ。「…そ、そうですか、では早速内見させて頂きたいのですが?」
僕は興奮を抑えながらたずねた。
こんないい物件、もし情報が間違ってなければ、誰もが放っておくはずがない。
だから一刻も早く内見したい。
僕はすぐに予約を取り付けた。
数時間後、先程電話で話した不動産屋の店長さんと合流し、現場(部屋)へと向かった。現場はどんな所に位置するのか?
周辺には何がある?
買い物しやすい店は?
人通りは?
最寄り駅にはどう行くんだ?
現場に到着してからも、雰囲気は?
現場建物は暗くはないか?
隣人はどんな人物が住む?
防犯対策はOKか?
まるで刑事だ。建物周辺を見渡す。
…いい。グッド。
現場外部の様子は静かで申し分ないようだ。
次はいよいよ現場内部だ。
ゆっくりと部屋のドアを開ける‥。
!…ビ、ビ、ビューティフォ〜〜ッ!!
き、綺麗だ‥。玄関からもうすでに、部屋の上質感が窺える。
いや、でも待て。
判断するのはまだ早い。これまで幾度となく、内見途中で裏切られてきたではないか。
現場(部屋)を全部調べ終えるまではまだ断定は出来ない‥。
捜査の基本だ。
そういい聞かせ、部屋へと進んだ。…う、うう…。
どこも見ても申し分ない。最高だ。内装は綺麗にリフォームされてるし、陽の光も充分に入るし、窓からの見晴らしもいい。
そして何より部屋が明るい。
エクセレントッ!捜査終了!
「ここにしますっ!お願いしますっ!」
僕は叫んでいた。
不動産の店長さんと契約の話をする。
ウキウキ。
嬉しさが込み上げてくる。その日はそのあと予定があったので、
次の日に不動産屋で契約に伺う約束をし、
申込みの旨だけしっかりと伝え、その部屋を後にした。よかった〜〜、
やはり妥協せずに待っていた甲斐があったーー!!
僕はかなり嬉しかった。そして1時間後の事だった。
携帯が鳴った。
電話に出ると、さっきの店長さんだ。
「さっきはありがとうございました!
おかげ様でいい部屋が見付かりました!」
僕は御礼を述べた。
すると店長さん、「…小山さん、実はですねー、さっきの物件、大家さんに問合せたところタッチの差で1番手が入っているそうで……。
ですので小山さんは2番手ということで、キャンセルが出た場合OKということでお願いします!」「………」
ドーンッ!ドドーーンッ!!
一気にドーン底だ。
言わんこっちゃない。あの時、朝イチ、内見しないで申し込んでおけば…。
悔やんでも仕方ないが、
タッチの差と言われた分、尚更悔しい。でもっー!負けねーぞっ!!
必ずや、いい物件を探し出してやる!
待ってろよっ!物件っ!!小山弘訓

